LEVEL:18 三人で勇者なんだよ  2

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   LEVEL:18 三人で勇者なんだよ  2


 城内に入り込んでいた魔物たちを始末しながら、アス達は前線で指揮を執るサマルトリア王の元へとたどり着く事が出来た。
「父上!」
「おお、セシルではないか!」
 サマルトリア王は相変わらずの飄々とした風で、それでいて隙のない雰囲気のままこちらに視線を投げる。
「無事の再会を喜びたい所だが、如何せん状況がまずくてのう」
 王は苦虫を潰したような顔で、手にしていた剣を塔の向こうに向ける。ややあって、その塔が爆音とともに崩された。その向こうに見えたものは――
「――うっわ、大きいな」
 セシルは引き気味に呟いた。アスは眉を潜め、ルーナは圧倒された様に半歩下がった。
 頭上に一本角を頂き、ぎょろりと大きな一つ目、褐色の肌を持つ人型の巨大な魔物だった。そして、そのがっちりした肩に乗っていたのは見覚えのある紫の大猿――バズズ。
「敵大将はあの猿じゃのう。なかなかにずる賢く立ち回っておるわい。巨人の方は言いなりじゃが、ものすごい怪力で棍棒を振り回しておるゆえ、近づけんのじゃ」
「このままでは城壁が崩されてしまいます!」
 王の横で、側近が悲鳴を上げる。
「とにかくあのでかいのを止めないと、何ともならないみたいだね」
 低く唸るセシルに、アスは同意してルーナを見た。
「マヌーサを頼めるか」
「やってみるわ」
「俺は奴の足を狙う。セシルは呪文で追撃を頼む」
「了解。父上、僕たちは敵将に集中します。残りは任せていいですか」
「勿論じゃ。すまんがそなたらの力を借りるぞい。――アスティア王子よ」
 短く作戦を確認し終えたタイミングで、サマルトリア王がアスを呼びとめた。顔を向けると、サマルトリア王は自らが装備していた何かをアスに向けて掲げた。
「――!」
 それを目にして心臓が高鳴る。あの剣を手にした時と同等の緊張感。目が冴える程の青に、大きく翼を広げたラーミアの紋章が装飾された美しい盾。輝くそれは、まぎれもなく――!
「ロトの盾じゃ。これを!」
 サマルトリア王は有無を言わさず盾を押し付けてくる。アスはそれを受け取りざまに装備し、その軽さに感嘆しながら頷いた。
「拝借致します。行くぞッ」
「ええッ」
 アスを先頭に、セシルとルーナも駆ける。
 身を隠しつつ、一直線に巨人の足元へと駆けた。巨人は無心に棍棒を振り回しては、建物を破壊していく。その肩のバズズは、楽しげに指示を出している様子が窺えた。幸い、まだこちらには気づいていない。目配せし合い、タイミングを計ってルーナが呪文を唱えた。
「マヌーサ!」
 放たれたそれはバズズもろとも巨人を包み、幻惑の霧を生み出す。その奇襲に、巨人は僅かに動揺したのか動きを止める。しかしバズズは冷静だった。薄笑いを消さないまま、巨人の耳に手を掛けて声を張り上げた。
「来たな、ロトの末裔ども!」
 しかしこちらの姿は把握していない様子に、アスはマヌーサの成功を知る。即座に行動に移した。巨人の足元に潜り込み、力任せにドラゴンキラーを突き立てた。しかし巨人は僅かに身じろいだのみ、堅牢な皮膚、ならば。アスは体制を整え、連撃でその足を傷つける。
「アス!」
 セシルの声が飛ぶのと、間髪入れず振り下ろされたアトラスの棍棒が空を切り、アス目掛けて打ち下ろされたのは同時か。盾で受けた衝撃が全身を震わせ、足が地面にめり込むような感覚を覚えながらも、その強烈に重い一撃を防ぎ切れたことに驚愕する。この強度、どんな金属で作られているのか計り知れない。
 攻撃を防いだその横を抜けて、セシルのベギラマが巨人の足に追撃する。傷口に入り込む熱は流石に効いたのか、巨人が呻いてその巨体を大きく傾けた。アスとセシルは咄嗟に身を隠した。その隙を見て、
「イオナズン!」
 ルーナの爆撃が炸裂する。それは流石に予測不可だったのか、バズズも動揺を見せて高く飛んだ。その連撃と轟音は、周囲の度肝を抜くのに十分だった。抗戦する魔物も兵士も驚きに手が止まる。
 地に膝をついたアトラス、その背にふわりと戻るバズズの顔に、もう笑みは無かった。
「……今のは、流石にやばかったな、アトラス」
「ウゥー」
 アトラスと呼ばれた巨人はバズズに呼応するよう唸り、頭を振ってこちらを睨んでくる。その目はこちらをまっすぐにとらえており、マヌーサが既に消えている事を窺い知れた。
「短期間に随分力をつけやがったな。……なあ、ローレシア殿下。ヴィンフリートが何者か、ローレシア王には尋ねてみましたんで?」
「ああ」
「んじゃ、事実を知ったうえでハーゴン様に弓引くと」
 アスはそれ以上答えず、刃の切っ先をバズズに向ける。バズズももう、何も問うては来なかった。舌なめずりし、戦闘態勢を取る。
「バズズ、これ以上サマルトリアを蹂躙することは赦さない!」
 セシルは強い語調で詰め寄る。
「ち。厄介だな……ん」
 ふと、バズズは何かを感じたのか虚空に視線を向ける。そこに現れたのはベリアルだった。援軍か、と緊張を走らせたが。
「バズズ、アトラス。帰還命令だ。今すぐロンダルキアへ戻れ」
「あん?」
「時は熟した。いよいよ、破壊神が復活する」
「へえ、そいつはおもしれえ。命拾いしたっすねえー、サマルトリア陛下!」
 べぇと舌を出し、バズズはアトラスを伴ってルーラを唱える。ベリアルはやはり圧倒的な威圧感で此方を見据えた。
「ロンダルキア、迷宮牢獄の先で待つ。来るがいい、ロトの子孫立ちよ」
 そう言い残すと、ベリアルは残りの魔物たちを引き連れ、ルーラで姿を消した。
 急に終息を迎えた戦闘に、周囲が静まり返る。安堵のため息がそこかしこで漏れる中、アスは背筋に流れる冷や汗の存在に拳を強く握りしめた。
「ロンダルキア、迷宮牢獄の先」
 反芻すると、サマルトリア王が背後に歩み寄ってくる。
「ベラヌールの街に、かの地への旅の扉が開けていると聞く。――行くのか」
「はい」
 短い問いに振り向いて即答すると王は頷いて、険しかった表情を僅かに緩めた。
「ひとまず、サマルトリアの危機は去ったようじゃの。礼を言おう。よくぞ、この窮地から救ってくれた」
 そして次に、セシルに視線を送る。
「見違えたぞ、セシル。あののんきな息子が、ここまで強ぅなって戻ってくるとはのう。喜ばしい限りじゃ」
「父上も、あの襲撃の中よくご無事で」
「ふぁっはっは。まだまだ負けておられぬからな」
 セシルは王に近づき、そのまま軽く抱き合って無事を喜び合う。一通りそれを済ませた後、王はアスとルーナにも視線を配る。
「アスティア王子もご苦労だったのう。セシルの守護、感謝しておるよ」
「……いえ。セシル殿下には私も助けられております故」
「そうか」
 王はどこか得意げに眉を上げた後、ルーナに視線を送る。
「そして、ルナフィーリア王女。よくぞ無事でのう。知らせを聞いて、我らも胸を撫で下ろしたぞ。美しくなったのう。まさしく、エルフリーデ妃の生き写しじゃな」
「ありがとうございます。陛下」
 ルーナは微笑んで、ふわりと礼を取る。
「ともかく、疲れただろう。今宵はここで休み、十分に英気を養ってゆくがよい」



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